不動産売買の途中キャンセルは契約前後で異なる!?特例や違約金も紹介
2023年02月19日
「不動産の売買契約をしたあとにキャンセルはできる?」
「売買契約が決まった途端にキャンセルしなきゃいけなくなってしまった…」
不動産売買契約において、売主であっても買主であっても途中でキャンセルをしなければならない状況になることはあります。
原則として、売買契約をしてからキャンセルをした場合、違約金を支払わなければなりません。
売買契約をする前であれば、キャンセルは自由にできます。
ただし売主としてキャンセルした(売却活動を辞めた)場合は、不動産会社に違約金を支払わなければならないこともあります。
今回は、不動産売買契約において契約前・契約後にキャンセルはできるのか、またキャンセルした場合のペナルティなどについて紹介していきます。
これから不動産売買契約の予定がある方は、しっかり把握しておきましょう。
記事の監修者
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株式会社サプライズコンシェルジュ 代表取締役
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不動産売買仲介・不動産買取歴10年以上
大手不動産会社で売買仲介営業(不動産売買取引100件以上)→不動産テック上場企業の名古屋支社立ち上げ・不動産屋約200社のCS担当→不動産売却マッチングサービス「いえうるん」リリース
資格宅地建物取引士
事業許認可宅地建物取引業 愛知県知事(1)第24918号
記事の監修者(顧問弁護士)
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星ヶ丘法律事務所顧問弁護士
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■プロフィール
平成16年北海道大学法学部卒業 平成20年名古屋大学法科大学院卒業 平成24年弁護士登録 名古屋市内の法律事務所で勤務 平成31年星ヶ丘法律事務所開設
資格弁護士
不動産売買のキャンセル可否は契約前後で変わる
結論から伝えると、不動産売買のキャンセルは「いつでも」できます。
ただし、売買契約をした上でキャンセルした場合、契約書に記載されている違約金・損害賠償などが発生するのが一般的です。
まずは不動産売買契約において、契約前と契約後にキャンセルした場合どうなるのかについて解説します。
契約前
【買主の場合】
契約前であれば自由にキャンセルできます。
契約自由の原則といって、人が社会生活を営むに際し結ぶ契約は、公の秩序や強行法規に反しない限り、当事者が自由に締結できるという民法上の基本原則があります。
ただし、契約直前のキャンセルなどで売主に経済的損害を与えてしまった場合は、損害賠償が請求される可能性があるので注意しましょう。
【売主の場合】
基本的に買主の場合と同様で、契約前であれば自由にキャンセル可能です。
ただし、不動産会社との媒介契約が「専任媒介契約」もしくは「専属専任媒介契約」の場合、契約期間内に売却活動の解除を申し出ると、媒介契約に対しての違約金が請求される可能性があります。
媒介契約は3ヶ月で更新するかどうか選択できるため、更新のタイミングで解除すれば違約金は発生しません。
契約後
売主、買主どちらであっても売買契約後のキャンセルには違約金が発生します。
しかし、双方の話し合いにより合意した場合は、無償でキャンセルできます。
売買契約の際に仲介手数料の半金を不動産会社へ支払っている場合、特約など正当な理由がない限りは返金されないと考えておきましょう。
なぜなら売買契約が完了した時点で、不動産会社に仲介手数料を請求する権利が発生するからです。
引き渡しが完了していないため、全額請求されることはありませんが、キャンセルが発生したときの対応は売買契約時に確認しておくことが大切です。
不動産売買を契約後でもキャンセルできる特約
不動産売買契約では契約後にキャンセルしても、特約によって契約を無効にし、白紙に戻せることもあるので覚えておきましょう。
住宅ローンの審査が通らなかった場合
不動産の売買契約書に「住宅ローン特約」について記載されていれば、買主が特約を適用できる状態になったときに契約の解除が可能です。
住宅ローン特約とは、買主が住宅ローンを利用できなかったときに、違約金を支払うことなく契約解除ができる約定です。
不動産は住宅ローンを組んで購入することが多いですが、買主がローンの本審査に通らないこともあります。
住宅ローンを利用する前提で契約を結んでいた場合、ローン審査が通らなければ買主は売買代金を支払うことができないため、特約により契約を無効とできます。
ただし、期限内に買主が住宅ローンの申し込みを行わなかった場合など、買主の不履行については特約が不適用となります。
ローンを申請する金融機関名が契約書に記載されていないという理由だけでも、ローン特約が適用されなかった事例もあるため、十分に注意して契約しましょう。
所定の期日までに引き渡しができない場合
買主がマイホームの買い替えで契約をした場合、現在住んでいる物件の売却成功を条件に新しい家を購入する「買い替え特約」を設けることができます。
買い替え特約の内容は、所有物件が所定期日までに一定の金額以上で売却できなかった場合、新居の購入契約を白紙にできるというものです。
ただし、買い替え特約は売主の承諾が必要となるため、売主の承諾が得られなかった場合は特約を設けることができません。
不動産売買キャンセルによる違約金の相場
ここからは実際に不動産売買キャンセルをした場合の違約金について紹介します。
買主がキャンセルを申し出た場合と売主がキャンセルを申し出た場合についてそれぞれ解説していきます。
買主がキャンセルを申し出た場合
冒頭で紹介したように契約前であれば違約金は発生しません。
契約後に買主がキャンセルを申し込んだ場合の違約金は、売買価格の10%〜20%が相場です。
例えば、3000万円の不動産を購入したものの、違約金10%(300万円)で契約後キャンセルしたとしましょう。
上記の場合、まず不買主はあらかじめ手付金として違約金と同額の300万円を売主に渡します。その手付金を放棄することで、違約金を渡し、キャンセルしたことになります。
このとき、手付金が200万円で違約金が10%と取り決めていた場合は、手付金を放棄+残りの100万円を支払うことでキャンセル可能です。
売主がキャンセルを申し出た場合
売主は契約前にキャンセルした場合、買主に違約金を支払う必要はありません。
ただし、「専任媒介契約の期間内」もしくは「専属専任媒介系契約の期間内」に売却活動を辞めるというキャンセルの場合は、不動産会社へ広告費やチラシ代の請求をされることがあります。
このとき請求される金額には上限があり、契約成立時の仲介手数料と同額です。これを約定報酬額と呼びますが、約定報酬額は以下のように定められています。
売買する不動産の価格(税抜き) | 約定報酬額の上限 |
不動産の価格が200万円以下の場合 | 売買価格×5%+消費税 |
不動産の価格が200万円超〜400万円以下の場合 | 売買価格×4%+20,000円+消費税 |
不動産の価格が400万円超の場合 | 売買価格×3%+60,000円+消費税 |
例えば、不動産の価格が3000万円だとすると、約定報酬額の上限は約105万円となります。
売買契約前でも、媒介契約の期間内であれば、キャンセルで多額の請求をされてしまう可能性があるため注意しましょう。
売買契約後のキャンセルは買主の場合と同様で、買主への違約金は売買価格の10%〜20%が相場です。
契約後であれば、不動産会社への支払いは契約時の仲介手数料の半金で済む場合が多いですが、あらかじめ確認しておくようにしましょう。
不動産売買の契約をキャンセルするデメリット
ここまで不動産売買契約のキャンセルについて紹介してきました。改めてまとめるとデメリットは大きく2つあります。
- 違約金が発生するリスクがある
- キャンセルできない可能性がある
それぞれのデメリットについて解説します。
違約金が発生するリスクがある
特約でのキャンセル、もしくは止むを得ない場合のキャンセルでない限りは違約金が発生すると考えましょう。
止むを得ない場合のキャンセルとは、地震や津波などの自然災害によって物件が売却できる状態ではなくなることなどを指します。
違約金は決して安い金額ではないため、不動産売買契約をする際はきちんと決断してから契約しましょう。
キャンセルできない可能性がある
契約後の引き渡し直前になると「キャンセルすることができない」可能性があります。
これは売主もしくは買主が履行に着手している場合は、手付金の放棄だけではキャンセルが認められらないというものです。
履行に着手とは、「客観的に外部から認識できるような形で履行行為の一部をなし、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合」と定められています。
「これをしたらキャンセルできない」という線引きは厳密にはできず、ケースバイケースとなっているため、もしキャンセルができないと伝えられた場合は、裁判になることを考え、弁護士に相談するようにしましょう。
まとめ:不動産売買のキャンセルは契約前に行おう
不動産売買をキャンセルした場合、は以下です。
- 買主:契約前のキャンセルは自由にできる。契約後のキャンセルは基本的に違約金が発生する
- 売主:契約前のキャンセルは自由にできるが、媒介契約によっては違約金が発生する。契約後のキャンセルは基本的に違約金が発生する
売買契約後は特約の利用がない限り、基本的に違約金(売買代金の10〜20%)発生します。
また、引き渡しギリギリの状態でのキャンセルはできない場合もあるため、不動産売買のキャンセルをするのであれば、必ず契約前にしましょう。
不動産売買について事前に注意することが知りたい方は、不動産のプロに無料で相談しましょう。