【プロ監修】不動産の個人間売買はできる?メリットや注意点を解説
2023年03月17日
不動産売買は不動産会社の仲介が一般的ですが、必ずしも不動産会社に仲介してもらう必要はありません。
不動産会社を仲介せず不動産売買を行う、個人間売買では仲介手数料を削減できるため、大きくコストを削減できますが、個人間取引では注意しなければならない点も多数あります。
本記事では不動産売買を個人間で行う方法やメリット・デメリット、注意点などを徹底的に解説します。
不動産の個人間売買では取引相手との関係性が重要なため、どのような人と取引を行うのかも検討しましょう。
記事の監修者
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株式会社サプライズコンシェルジュ 代表取締役
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不動産売買仲介・不動産買取歴10年以上
大手不動産会社で売買仲介営業(不動産売買取引100件以上)→不動産テック上場企業の名古屋支社立ち上げ・不動産屋約200社のCS担当→不動産売却マッチングサービス「いえうるん」リリース
資格宅地建物取引士
事業許認可宅地建物取引業 愛知県知事(1)第24918号
記事の監修者(顧問弁護士)
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星ヶ丘法律事務所顧問弁護士
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■プロフィール
平成16年北海道大学法学部卒業 平成20年名古屋大学法科大学院卒業 平成24年弁護士登録 名古屋市内の法律事務所で勤務 平成31年星ヶ丘法律事務所開設
資格弁護士
不動産の個人間売買とは
不動産の個人間売買とは、不動産業者を介せず売主と買主の間のみで取引をすることです。
基本的に個人間売買をする場合の取引相手は、親族・知人・友人のような身近な人と取引します。
身近ではない人とも売買できますが、個人間取引では住宅ローンが組めない可能性があったり売買契約書の不備によるトラブルが起こりやすかったりするためあまり行われません。
また、面識のない相手との個人間取引はおすすめできません。
取引相手が身近な人で、大きなトラブルにならなさそうであればコスト面で大きくメリットがあるので積極的に取引してもよいでしょう。
ただし、必要書類などが多数ありますので一つ一つチェックして取引をしましょう。
不動産の個人間売買のメリット
不動産売買を個人間で行う際のメリットは大きく分けて2つあります。
- 仲介手数料 + 消費税がかからない
- 契約の自由度が高い
上記について不動産会社に仲介してもらった場合とどれくらい違いがあるのか解説していきます。
仲介手数料がかからない
個人間取引であれば不動産会社などに仲介してもらうことがなくなるため、仲介手数料が必要ありません。
以下の表は不動産会社などに仲介したもらった場合の一般的な仲介手数料です。
売買する不動産の価格(税抜き) | 一般的な仲介手数料 |
不動産の価格が200万円以下の場合 | 売買価格(税抜き)×5%+消費税 |
不動産の価格が200万円超〜400万円以下の場合 | 売買価格(税抜き)×4%+20,000円+消費税 |
不動産の価格が400万円超の場合 | 売買価格(税抜き)×3%+60,000円+消費税 |
仲介手数料は不動産の価格が高額になるにつれて大きくなり、3,000万円以上の売買をした場合仲介手数料だけで100万円以上もかかってきます。
仲介手数料が不要になる個人間売買は、最も大きなメリットともいえるでしょう。
契約の自由度が高い
個人間売買であれば契約の内容も自由に決められます。
親戚間、知人間で行われる取引の場合、支払いの期限に余裕を持たせたり、売主に余裕がある場合、引き渡してから支払う選択肢をとることも可能です。
また、そもそも個人間で話を進めているのであれば急いで契約せずとも売り物件がなくなってしまうということもありません。
お互いの意見をすり合わせて契約できることも個人間売買のメリットといえるでしょう。
不動産の個人間売買のデメリット
個人間売買では大きなメリットがありましたが、個人間売買ならではのデメリットもあります。
大きく分けると以下の3つが代表的なデメリットです。
- 住宅ローンを組めない可能性がある
- 契約書の作成が複雑
- 当事者間のトラブルが発生する可能性がある
上記の内容について触れていきます。
住宅ローンを組めない可能性がある
個人間売買をする場合、住宅ローンを組むことは難しくなります。
住宅ローンを組む場合、一般的に「売買契約書」と「重要事項説明書」を提出しますが、重要事項説明書は宅地建物取引士でないと作成できず、多くの場合、必要書類が準備できず銀行の審査が通らないためです。
また、買主と売主が共謀して住宅ローンを不正利用するリスクなどもあり、個人間売買をした場合は住宅ローンが組めません。
住宅ローンが組めないことも、個人間売買が親戚間、知人間でしか行われない理由です。
契約書の作成が複雑
個人間売買において、「売買契約書は必ず用意しなければならない」わけではありません。
口約束でも契約は有効ですが、契約書を用意してないと後々トラブルに発展してしまう恐れがあります。
ただ、契約書を個人で作るのは面倒で複雑です。
きちんとした契約書を用意するなら以下の内容を記載する必要があります。
- 売買物件の表示(不動産の所在や面積など)
- 売買代金や手付金・中間金や残代金の金額など
- 売買物件の引き渡し条件
- 危険負担(地震や火災などで物件の引き渡しができない場合の定め)
- 瑕疵(かし)の修復(契約時にはわからなかった瑕疵など、雨漏り、シロアリ被害などが生じた場合の定め)
- 費用の負担(契約書に貼付する印紙税など)
- 公租公課(税金)の精算基準(固定資産税などの負担に関する取り決め)
- 手付解除の期限について
- 契約違反した場合について
- 引き渡し前の物件の滅失、毀損
- 特約など
自分ひとりで売買契約書の内容を完璧に仕上げることは難しいため、もし売買契約書を作成する場合は司法書士への依頼が無難です。
当事者間のトラブルが発生する可能性がある
個人間売買でもっとも注意したいポイントが当事者間でのトラブルです。
例え身近な関係性であっても不動産売買のような大きな金額が動く取引ではトラブルが発生しがちです。
代表的なトラブルとして「目には見えない欠陥(シロアリ被害や雨漏りなど等)に関してのトラブル」「金銭の支払いトラブル」「言った、言わなかったなどのトラブル」があり、当事者間取引の難しさが見て取れます。
特にシロアリ被害は修繕費で数十万円〜数百万と高額になることから、必須の確認項目といえます。
上記トラブルが少なくなるよう、個人間売買は可能な限り身近な人と行うようにしましょう。
不動産の個人間売買で必要な書類
不動産売買を行う際は個人間であっても必要書類が複数あります。
基本的に書類は売主が用意するため、売主の方はしっかり確認しましょう。
必要な書類は以下の通りです。
- 不動産売買契約書
- 権利証
- 登記事項証明書
- 建築設計図書
- 固定資産評価証明書
それぞれがどのような書類で、用意するためにはどうすればいいか簡単に紹介します。
不動産売買契約書
不動産売買の内容について取り決めをする書類です。
売主と買主で相談し、個人での作成もできます。
個人で作成すると内容の抜け漏れが発生しやすいため、司法書士に依頼して作成してもらう方法が無難です。
権利証
権利証とは、登記済証または登記識別情報のことです。
不動産登記において申請人が登記名義人となる登記申請をした場合に、法務局の登記官より通知されます。
もし権利証を紛失していた場合は権利証の失効の申し出をしましょう。権利証は紛失しても失効手続きをしない限り有効なため、悪用される恐れがあります。
権利証は再発行もできないため、もし紛失した場合は法務局に問い合わせて指示を仰ぎましょう。
登記事項証明書
登記事項証明書または登記謄本でも構いません。名称が異なるだけであって内容は同じです。
「登記事項証明書」または「登記謄本」は不動産の権利関係がわかる書類です。
登記事項証明書が手元にない場合はオンラインでの請求か、法務局に出向いて取得します。
オンラインで請求する際は登記・供託オンライン申請システムのホームページから請求できます。
建築設計図書
建築設計図書は、家を建築したときにどのような工事を行ったのかを記載した書類です。
建築設計図書の他にも測量図や検査済書など、土地の境界がわかるものや物件を購入した際に取得した書類はできるかぎり用意しておきましょう。
固定資産評価証明書
固定資産評価証明書は、土地や建物の固定資産の評価額を証明する書類のことです。
名義変更をする際に登録免許税をいくら支払うか計算する際に使用します。
固定資産評価証明書は、資産の所有者もしくは同居する家族であれば市区町村の役所で取得が可能です。
不動産の個人間売買でかかる費用
引っ越しやリフォームなどを除き、不動産売買を行う上で必要になる費用は大きく分けて3つあります。
- 印紙税
- 登録免許税
- 司法書士への報酬
それぞれがいつどのように必要になるか紹介します。
印紙税
印紙税とは、不動産売買契約書や領収書などの課税文書を作成した際に、印紙税法に基づいてその文書に課税される税金です。前提として、不動産売買契約書を作成しない場合は印紙税が発生しません。
作成する場合は不動産売買契約書に印紙を貼り付け、その場で消印すると、印紙税を収めたことになります。
課税文書の種類によって印紙税の金額は異なりますが、不動産売買契約書の場合は、以下の金額の印紙税を収めなければなりません。
売買契約書の記載金額 | 印紙税(本則) | 印紙税(軽減税率) |
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円を超え10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
※軽減税率の対象となる契約書は、不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるもので、2014年4月1日から2022年3月31日までの間に作成されるものです。
ちなみに不動産売買契約書を電子化で行った場合(PDFファイルでのやりとりなど)は、文書の作成にならないため、非課税となり印紙を貼る必要がありません。
費用を最小限に抑えたい場合は、電子契約にチャレンジしてみましょう。
登録免許税
登録免許税とは、登記をしてもらうのに要する費用です。
基本的に買主が支払う税金ですが、売主も売却する不動産に抵当権が設定されている場合は登録抹消登記で支払わなければなりません。
買主と売主とでは、支払う登録免許税の計算方法が違うため注意してください。
それぞれの登録免許税は以下の通りです。
- 買主が支払う登録免許税:固定資産税評価額×1.5%
- 売主が支払う登録免許税:抵当権を外す不動産1筆あたり1,000円
登録免許税は自ら税務署へ行き納税も可能ですが、登記の手続きなどを司法書士に依頼する場合は司法書士が代わりに納税し、司法書士報酬として支払うのが通例です。
司法書士への報酬
不動産売買契約書の作成や登記を司法書士に依頼する場合、司法書士報酬を支払う必要があります。
司法書士報酬には法律上の決まりはありません。相場は以下の通りです。
- 売買契約書の作成:10万円〜20万円(売買価格が高ければ高いほど増える)
- 所有権移転登記:2万円〜10万円
- 抵当権抹消登記:1万円前後
上記はあくまで相場であって、売買する不動産の価格や司法書士などによっては大きく変わってくる可能性があります。
司法書士は報酬額も重要ですが、親身に相談に乗ってくれるかどうかもしっかり判断して決めましょう。
不動産の個人間売買をする際の注意点
不動産売買を個人間で行うと大幅なコストカットができますが、仲介してもらわない分、当事者間での取り決めをしっかりしておかなければなりません。
取り決めがしっかりされていない部分が、トラブルの発生がしやすいため、どのようにすればトラブルが発生しにくくなるか、注意点を紹介します。
瑕疵担保責任の取り決めをする
瑕疵担保責任(契約不適合責任)とは、契約において売主や請負人が相手側に引き渡した物が「契約内容に適合していない」と判断された場合、売主が責任を追う責任事項です。
例を挙げると、「実は土地面積が違った」「実はシロアリ被害に合っていた」「実は庭の地中に配管が通っていて木を植えることができなかった」などです。
契約書に記載されている事とは間違っていたり、記載されていないことに対して売主がどこまで責任を負ったりするかの取り決めは必ずしましょう。
「いつまでに発覚したら責任を追うか」「賠償額は何%なのか」など細かく取り決めをしてトラブルを無くしましょう。
売買契約書には印紙を貼る
個人間で売買契約書を作成すると「印紙」を忘れがちですが、電子契約でなく交付してサインなどが必要な場合は必ず印紙を貼るようにしましょう。
印紙を貼り忘れてしまうと、後々税務調査が入った際に最大で「もともとの印紙税+2倍額の税金」を延滞税として支払わなければなりません。
売主と買主で現地確認を行う
トラブルが起こらないようにするためには現地確認が重要です。
現地確認は、身近な間柄の人との取引であっても慎重に行い、お互いの目で見て、細かい部分まですり合わせてから契約しましょう。
まとめ:不動産の個人間売買は慎重に検討しましょう
個人間売買は仲介手数料がかからない分、当事者は細かい部分まで管理が必要です。
売買契約書の不備によるトラブルも起こりやすく、個人間売買では住宅ローンの申請も下りにくいため、身近な相手でない限り取引は行わないほうがよいでしょう。
今後、不動産売却を考えている方で個人間売買などのコストカットや不動産を高く売却したいと検討している方はぜひ「いえうるん」へご相談ください。